ムーンロイド その1

「北海道ブランド」のアパレルを創り出したい
「北国のためのダウンジャケットを作ろうと思ったのがきっかけです。」
そう語る甲斐綾乃さんは、アパレルショップ「ムーンロイド」の代表を務めている。
ムーンロイドとは、どういったお店なのでしょうか?
服やバックなどのアパレル製品を販売しています。よくある小売店と違うのは、自分たちで商品企画をしたり、メーカーに別注して、ムーンロイドオリジナルのデザインを反映したりしてもらったりと、ここでしか取り扱っていないものなども多く販売している点。
旭川に店舗を構えていましたが、2017年10月に当麻町へ店舗を移すことになりました。
当麻町に決めた理由を教えて下さい。
私たちがオリジナル商品を作るにあたって意識しているのは、アパレル業界においての「北海道」というブランド価値を生み出せるものを創るということ。次の展開を考えたときに「もっとも北海道らしい」場所への移転を検討しました。
北海道らしい土地柄で寒いこと、雪があることが最初の条件でしたが、最終的には未来へ向かってどんどんチャレンジしようという町のエネルギーに惚れ込んでここを選びました。
体験としてのショッピングを見直す
こうして生まれたダウンジャケットは「最強のダウンジャケット」。羽毛のかさ高をフィルパワーと呼ぶのだそうだが、通常は高級品と言われる商品が550FP以上なのに対して、ムーンロイドのダウンジャケットは940FPだとのこと。それゆえ価格もそこそこするのだが、あっという間に完売しているというから、その品質は折り紙付きだ。
旭川という人の集まる大きな都市から当麻町へというのは難しいのでは?
よく言われるんですが、実は私たちはそうは感じていないのです。
ショッピングに効率や利便性を求めると、最終的にはネット通販に行き着くのではないかと思っています。反対に、旅行や外食のように、ショッピングを一種の体験として考えると、実際の店舗でしか表現できません。そういった体験として位置づけると、大都市よりも当麻町のような土地の方が、お店に来ていただく過程や車での道のりを含めて一つのコンテンツとして表現しやすいと考えています。
ですので、当麻町に移転するというのはチャレンジという部類のものではなく、私たちの中では、一つの必然的な理由として確立している気がします。
当麻町の魅力とは何でしょう?
北海道らしいところ。四季の美しい緑や白銀の世界、石狩川、そして大雪山など、全国や海外の皆さんに分かりやすく、北海道というブランドをお伝えできる風景が揃っていて、とても素晴らしいと思います。
新しい店舗はくるみなの木遊館の斜め向かいにありますが。
眼の前に大雪山が見えるんです。この景色が本当に好きで、お店の建物は、雨や風にさらされ経年劣化していく過程で価値が下がるものではなく、その変化が味となり、価値が高まっているものにしたいと考えていたときに、築80年以上になる北海道大学の研究施設を移設できるという話をいただきました。当時だから可能だった、北海道の一本木を使用した合掌造りの構造体を移転しています。人工的には作り出せない80年の時を刻んだ梁(りょう)や柱は味わい深く、表情も豊かです。
また、内装はあえてシンプルに、プレーンな印象に仕上げています。白いキャンバスに一つ一つの商品を配置するイメージ。その中で唯一の装飾といえば大きな正方形の窓から見える絵画のような大雪山です。
商品の色味がブレないようなライティングや、ゆっくりと試着できる畳を使用したフィッティングルームなど、ショッピングのしやすさには気をつけました。もちろん、当麻町から補助金をいただけることになったのも、新築物件に挑戦する後押しになっています。
最後に、この先、当麻町でやってみたいことがあれば教えて下さい。
「北海道発信のアパレル」を日本だけでなく、世界のマーケットに向けて体現していきたいと思っています。
最近では地方発信が当たり前になってきましたが、アパレルの分野ではまだまだ一般的ではありません。それを実現するための要素として、当麻町は非常に面白いフィールドになると考えています。